『投資銀行を舞台にした人生模様』
「巨大投資銀行」は、バブルを経て金融ビッグバンから日本経済再生へ移行する金融ドラマである。
主人公は実直な投資銀行家・桂木。日系銀行に失望して外資の投資銀行への転身を機に成功をつかむ。決して順調なビジネス人生ではない。
時代に翻弄され、組織の都合に振り回される。サラリーマンそのものだ。
山有り谷有りの桂木とは対照的に、外資の花形トレーダー竜神は華やかだ。最先端の金融工学と野性的な勘と天性の強運を駆使したビックディールを記録していく。
投資銀行家は、野生の肉食獣のように強くてしたたかだ。決して群れない。甘えもゆるされない。超一流の人間に特有の、シビアさの果ての優しさが随所に描かれる。
例えば才能の豊かさゆえに奇人とさえ呼ばれるホウズィアが、クライマックスで部下である桂木の転身を即決する場面は感動的だ。
極限状態のハードワークで成功した人々の第二の人生は、驚くほど豊かだ。すべての制約から解放され、本当にやりたいことをする。船長となったり、投資の「現場に戻る」場合もある。
多彩な人生ドラマを追体験した読者の胸には、他人の芝生を羨むよりも、自分のすべきことをしよう、という決意が生まれるに違いない。
著者のデビュー作「トップレフト」は衝撃だった。金に群がる人々は、タフでしたたかで油断がならない。しかし、こんなに刺激的でオモシロイやつらもそうそういない。
著者は、ディールの「現場」から見た景色を魅力的に紹介してくれた。愛しているのだ。この業界とここに生きる個性豊かな人たちを。